今から1200年ほど昔の中国に、白居易という偉い詩人がいました。
彼の詩から生まれた言葉に
「天に在らば比翼の鳥、地に在らば連理の枝」というものがあります。
「比翼」とは2つで1セットとなるもの、すなわち上から降って来る「組ぷよ」を意味します。
「連理」はあまり耳馴染みの無い言葉かも知れませんが、字面を見れば明らかに「連鎖や連結の原理・理屈・理解」を示していることが分かると思います。
鳥は自由の象徴であり、宙を滑空し飛翔し舞う存在です。「比翼の鳥」は回しや壁越え、設置キャンセルなどの操作技術を表した比喩表現です。詩人らしい趣のある言葉ですね。
さて今回はもう一方、
「連理の枝」について考えてみたいと思います。
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ちなみに"連理"を辞書で調べると、「2つの木の枝がくっついて木目がつながること」とあります。
1文字ずつ読み解くと、"連"が「つらなる、つらねる、つながる」などの意味で、"理"が「(宝石の)すじ、模様」という意味を持っています。
明らかに、どう見てもぷよぷよの用語ですね。
玉のようなぷよが沢山つながり重なって、盤面に美しい模様を描きます。
それは幾何学的な層を形成するかも知れないし、不均一で一見無秩序なアシンメトリーの形かも知れません。
それは例えるなら「枝」という自然物がふさわしいでしょう。
ときに真っすぐに、ときに折れ曲がり、
長かったり短かったり、細かったり太かったり、
全く同じ枝が並んでいるかと思えば、1つ1つ個性があったり。
ぐんぐん伸びていく枝は、
発火という実を結ぶまで止まることはありません。
しかし、植物の生育には適切な環境が欠かせないでしょう。
「連理の枝」をマスターすることは、結局は
連鎖の理屈を理解することにつながります。
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れん-り【連理】[名]
①2つの木の枝がくっついて木目がつながること
②ぷよぷよにおいて連鎖が成す模様、光景。情景ある試合展開。
③ぷよぷよにおいて連鎖または連結の根本的な原理、理屈。またはその理解。
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本文ここからは③の意味で扱います。
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「言葉は分かったけど、結局『連理』はどんな理屈なの?」
そういう疑問があるかと思います。ごもっとも。
最も基本的な連理はこんなものです。
【1】ぷよは4つ以上つながると消える
【2】ぷよは上下左右4方向につながる
【3】ぷよは設置され無い限り下方向に落下する
ひょっとしたら「何を当たり前のことを」と思った人もいるかもしれません。
実は当然であることが案外重要なポイントになります。
(一方で、ぷよぷよをやったことが無い人はこの連理も知らないわけですからね。人にぷよを教える際は気を付けたいところです)
世の中さまざまな"決まりごと"があります。
罪を犯せば罰せられる人の法、水が上から下に流れる天の法。
連理は後者、天に属する森羅万象の理です。
「必ずそうなる」「因果の間に疑念を挟む余地が無い」「最初からそう決まっている」
そういう類のルールです。
つまりどういうことかというと、
【連理に逆らった連鎖は存在しえない】という事実が我々に突き付けられているわけです。
さらに噛み砕けば、
【連鎖を組みたければ連理に従うほか無い】ということです。
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上記3つの連理は、特に根本的かつ重要なものです。
そしてそこから
派生した連理も存在します。
【1】ぷよは4つ以上つながると消える
→
【4】ぷよは1連結・2連結・3連結のいずれかとして存在する
【2】ぷよぷよは上下左右4方向につながる
→【
5】A連結とB連結の同色ぷよを隣接させるとそれらは{A+B}連結のぷよになる
【3】ぷよは設置され無い限り下方向に落下する +【2】
→
【6】ぷよはそのぷよがある列またはその隣接列のぷよのみとつながる
【1】+【6】
→
【7】連鎖は連続する3列以内に4個以上ぷよが存在する場合のみ発生する
エトセトラ、エトセトラ。
連理を列挙したいわけでは無いので詳細は省きます。
ちなみに、例えば「盤面は6×13マスのフィールドで構成される」等は連理ではなくゲームのルールです。
これが
【ぷよが存在出来るのは6×13マスで構成される盤面に限定される】なら連理と呼んで良いと思います。
"役に立つ"連理はもう少し派生を続けると辿り着きます。
例えば
【任意の組ぷよで発火出来る状態は隙が少ない】も立派な(実践的な)連理です。
ピンと来ない人は
【隙を相手に突かれると不利になる】という連理も併せて考えて、
→
【連鎖を伸ばす時は「隙を作らない」または「相手の仕掛けに対応できる」どちらかであるべき】
「隙が少ない」「であるべき」という表現が気に入らない場合は長くなりますが、厳密な連理を組み立てることもできます。でも実践的にはこういうアナログな表現で十分だと思うのでここでは冗長さは割愛します。
このように厳然たる事実の連続である
"連理"を扱いやすいように解釈することを”応用”と言います。
世のぷよ講座等で教える"コツ"や”理論”というのはいわゆる応用連理のことなんですね。
こうやって厳密さを離れると、せっかくの”連理”が限定的な条件でしか成立しなかったり、複数の解釈が可能になったり、不適切になることがあります。そこをレトリックに惑わされず誤らずに実戦で本質を活用できる人を「連理を習得している」と言うのだと思います。
ここで応用連理は、書き手の都合で勝手に抜き取られた連理の一片であり、それらが不完全・不確かであったとしてもそれは人為的な瑕疵です。そのことが根本連理の普遍的な正しさを否定するものではない事に注意してください。
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抽象的な話はこの辺にして、
具象的な例を出しましょう。
上図はどうやら
先折GTRを組んでいるところの様子です。
青黄の組ぷよをツモったところです。
青も黄も、連鎖にしようとするならば、前述の【6】とかその辺の連理から、
2(3)~4列目に置くのが良いだろうと、直感的にも分かると思います。
それらしい候補は次の通り。
今回の記事は、連理の中身を紹介する主旨ではないので「どれが正解か!?」という話はしません。
しかし、例えば
【GTRの上に3列多重折り返しがあると強い】とか
【色の干渉は少ない方がいい】とかそんな連理を習得している人は
[A]や[B]の選択は避けるのでしょう。
(3列目の青が延びたせいで1,2列目のスペースが狭い&制限が付く状態になってしまっているので…)
さらに
【[2列目の青]が暴発リスクがある】という連理を習得しているならば、
[C]を避けようとするかもしれません。
(2列目はGTRで1段段差が生じる箇所なので、1歩先の連鎖キーぷよに連結が出来て飛んでしまう恐れがありますね…)
ということで
連理に従って[D]が無難だなぁと導くことが出来るわけです。
ツモ次第ということもあるので[D]が常に正解とは言いません。また別の連理によってほかの選択肢に誘導されることもあるかもしれません。
いずれにしても、
”最善手”を決定するには”連理”を用いるのだということを覚えておいてください。
実際ネクストに黄色たくさん見えたらこう置きたくなりますからね。
【制限の緩い連鎖尾は後回し】【制限の厳しいクッション部を優先】【折り返しスペースを広くとるために1,2列目を空ける】【黄を消した後、青が土台で回収される】【発火点を埋めない】
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以上、連理という概念の導入でした。
本題以外でも、聞きたいとこがあればコメント下さい。
ぷよの練習してて、「あ、今の置き方のパターン……なにか理解できたかも!」と感じたり、
人のプレイを見てて、「ん?おお!この人……"理解ってる"な!」と感じたりすることがあると思います。
自分自身、何をどう理解したのか、上手く言語化できなくてもやもやしていたんですが、
そのもやもやを"連理"という言葉で括ってスッキリしました。
応用連理の中身は正直どうでもいいです。
各個人で独自に解釈し、優先する連理を使って連鎖を組めばよろしいと思います。
要は
【1手1手の選択を、何の連理に従って決定したのか分かっていないといけない】と言いたかったんです。
まあ、分かってなくても対戦は出来るんですけど、自分の手や相手の手を分析するのであれば、連理を考えよう、ってことですね。
「間違った連理」は連理とは呼びませんが、「ごく限られた条件でのみ通用する連理」は存在します。きちんと”理”(=筋)を理解できるように努めましょう。
成長するためには 新しい連理を知らなければいけない のか、 今の連理の解釈を変えないといけない のか、人に聞いたり内省したりしてステップアップのカギを手に入れましょう。
さあ、連理の枝を繁茂させ、万朶の花実を咲かせましょう。
アルゴリズムで組む部分とパターンマッチングで組む部分があると思います。アルゴリズムというより、連理という方がふさわしい感じはします。