257

【16日目】実況解説のはじめかた【ぷよらーアドカレ2025】

by
クサノアニマル
クサノアニマル
こちらは #ぷよらーアドカレ2025 16日目の記事になります。
はじめに
はじめましての方ははじめまして。クサノアニマルと申します。
直近では新おいうリーグ第1回・第2回の実況解説をいくつか担当させていただきました。
気づけば既に公式チャンネルで34回も実況解説をさせていただいているようで、2年前はただの観戦勢だった自分としては幸せなかぎりです。

そんな貴重な経験をさせていただいているわけなので、
せっかく記事を書くなら、この経験の中で自分が考えてきたことをまとめることに価値があるんじゃないかと思いました。

――――――――――――――――――――――――

私はぷよぷよに限らずeスポーツ全般のファンです。
自分がプレイしているゲームはもちろん、プレイしていないゲームも観戦することが大好きなほどです。

APEXやVALORANT、LoLなどの盛り上がりは今もなお語るまでもないほどの凄さですが、
ぷよぷよシリーズのいちファンとしては、
ぷよぷよもそれくらい盛り上がってほしい、最上位プレイヤーの凄さを多くの人に知ってほしい、
そんな気持ちが徐々に強くなっていくのを感じました。

ただ、そのためには実況解説が非常に重要な役割を果たします。
ぷよぷよというゲームは、大連鎖こそ誰の目にもわかりやすいものの、
それ以外のわかりづらい部分にもたくさんの技術が詰まっています。
これを実況するの、難しすぎないか……?

そんなことを考えていた最中に開催された「新おいうリーグ」にて、初めて実況解説にトライしてみることにしました。
手探り状態ではありましたが、色々なeスポーツゲームを観戦してきた経験をもとに、
自分なりに情報を調べたり考えたりして実況解説のクオリティを上げるための努力をしてきたつもりです。

ということで本日のテーマは「実況解説のはじめかた」です。
ぷよぷよに限らず、他のeスポーツゲームの実況解説なども参考にしながら考えてきたことを共有したいと思います。
これから実況解説にトライしてみたい、という方の参考になればいいなと思います。
実況解説のはじめかた
理想の実況解説像を定めよう
実況解説をやってみようとなったときに、好きなキャスターさんたちの好きな部分を改めて考えて、
自分自身のキャラクター性も踏まえて実現できそうな要素を最大公約数的に取り出してみるということをしました。

まず自分の好きなキャスターについて挙げてみると、
・APEX Legends: 平岩康佑さん、大和周平さん
・VALORANT: 岸大河さん、OooDaさん
・LoL: Jaegerさん
・FF14(PvP): so5uさん
……すべて挙げるとキリがありません。
ぷよぷよeスポーツでもTomさん、ALFさんを筆頭に色々な方々の実況解説を好んで聞いています。

これらのキャスターさんについて好きだなと思うところを分析し、言語化すると以下のようになりました。

1. 圧倒的な情報量を無駄なく淀みなく音声化してくれる
2. ゲーム内の展開によって感情的な抑揚をしっかりつけて盛り上げてくれる
3. プレイヤーのキャラクター性を汲み取って視聴者に伝わるように言語化してくれる


他にも細かい要素はありますが、一旦自分はこれを評価基準としてやっていくことにしました。
もちろんこれは人によりますので、自分の例とはまったく違った要素になっても問題ありません。

自分の中での理想像を定めるということは、自身の実況解説に対する基準を定めることと同義です。
これをすることで、「今回の実況解説ではここをうまくできたか?」と言ったことを毎回自問自答し、
ラインに届いていない部分は対策を打つということが可能になります。
このあたりはゲームのプレイングと同じで、実況解説というオフゲームの要素についても同じように攻略すればよいというわけです。
 
まとめ
  • 自分の好きな実況解説者を探してみよう。
  • 実際に実況解説を聞いて、自分の好きな実況解説の要素を言語化してまとめてみよう。
実況解説するための環境を整えよう
YouTube の視聴維持率において、大事な要素のひとつは音質と言われています。
ゲームのプレイング内容が凄かったり、雑談の内容が面白かったりしても、
音質が悪いと耳の不快感が耐えられず離脱してしまうというわけです。

ただこれを解説しようとしてもですね……
基本的には機材と設定の話になってしまい、
実況解説の内容からはかけ離れてしまうのと、
すでに参考となる情報が動画なり記事なりで大量にまとめられていますので、

ここでは詳細には立ち入りません。なんせとんでもないことになる。

一応、世の情報を大雑把に箇条書きでまとめると、

・マイクは予算の範囲内でちゃんとした品質のものを選ぼう
・ノイズ抑制・ノイズゲートの設定をしてノイズをカットしよう
・コンプレッサーやリミッターの設定をして音量の変化がうまく調整されるようにしよう
・イコライザーの設定をして周波数帯ごとのボリュームを調整して音声の快適性を上げよう
・全体の音量をdB基準でなくLUFS基準で調整してバランスを整えよう


という感じです。
多分わからない単語があればそれで検索するとそのへんをまとめた情報がひっかかるかと思うので、
詳細の説明はそのへんに投げます……。
 
自分の機材やプラグインについて参考程度に記載します。
・マイク:SHURE MV7+
・オーディオインターフェース:YAMAHA ZG01
・デノイザー:SHURE Motiv Mix リアルタイムデノイザー、RX De-ess
・コンプレッサー:SHURE Motiv Mix コンプレッサー
・イコライザー:TDR Nova
・エンハンサー:Fresh Air
・音量バランサー:DeeTrimCast
まとめ
  • 実況解説のためにはキャプチャーボード・PC・マイク・配信ソフトが必要。
  • 音質は動画を最後まで見てもらうためにはちゃんとしたほうがいい。
  • 機材と設定を整えて快適な音質での配信ができるようにしよう。
  • 際限なくこだわれてしまうくらい沼が深いのでほどほどにしよう。
発声と滑舌を鍛えよう
まずは次の動画の18:37~19:27くらいの50秒間の実況を観てみましょう。League of Legends というゲームのシーンです。


キャスターのJaegerさんの詰め込み量と滑舌エグすぎる。

このボリュームの実況をこのスピードで行われると、たとえゲームのルールを把握していないとしても
なんか盛り上がってきたぞ!」という感覚になりますね。

ぷよぷよというゲームも負けず劣らず画面から得られる情報量が非常に多く、
しかも盤面の変化も非常にスピーディに行われるので、
同じくらいのボリュームで実況を詰め込みたくなる場面が出てきます。

これを実現するための発声・滑舌練習としては、『外郎売』という落語作品を使っています。

演劇やナレーションをかじったことのある方はご存知の方も多いと思いますが、
『外郎売』は早口言葉が大量に並んだような文章が含まれており、
滑舌の基本練習として長く愛用されています。

全体を読み上げても5,6分で終わるので、自分も普段の練習だけでなく実況解説前のウォーミングアップとして『外郎売』を読んでいます。
幸い今は声優の梶裕貴さんのお手本が聴けるのでこちらを参考にぜひトライしてみてください。



これ以外にも最近発見したぷよぷよ早口言葉を2つ共有しておきます。

1連鎖ダブル 2連鎖ダブル 3連鎖ダブル 4連鎖ダブル 5連鎖ダブル 6連鎖ダブル 7連鎖ダブル

1Pぴぽにあプロ 2Pペペペマンプロ ぷよぷよバトルスタート


3連鎖ダブルとかはよく発生する割に本当に言いづらい。
そしてぴぽにあさん、ペペペマンさん、勝手に早口言葉にして本当にすみません。
 
まとめ
  • ぷよぷよは情報量が多いゲームなのでそれを伝えきるには発声と滑舌の練習が必須。
  • 外郎売や苦手な早口言葉を使って練習してみよう。
話す内容を考えよう

環境は整った、では早速実況解説にトライしてみよう!
……となっても、いざ喋ろうと思うと何を話すべきなのかわからなくなると思います。
ここでは「実況解説においては何を話すべきなのか?」ということを考えてみます。

実況解説は情報を伝えるものですが、情報は大別すると「見えている情報」と「見えていない情報」に分けられます。
ぷよぷよで言うと、「見えている情報」とは土台の形や中盤の構えなど、
「見えていない情報」とは乱戦状況の有利不利、伸ばしの判断基準や2ダブを撃たなかった理由など、より解釈が多く含まれる部分の話です。

ここでよくある疑問は、「見えている情報は見えているわけだからわざわざそれを話すのは冗長になってしまうのでは?」というものでしょう。
結論から言うと、あまり気にせず、画面上で捉えた情報はどんどん口に出していいと思っています。

例として、以下のOooDaさんによるVALORANTの実況シーンを観てみます。


ゲームのルールがわからなくてもなんとなく伝わると思うのですが、
動きの多い場面ではとにかく「見えている情報」についての言及が9割以上を占めています。
それなのになぜ冗長に感じないのでしょうか。

ひとつは、「見えている情報」をそのまま伝えることによって単純にボリュームとスピード感が増し、臨場感を与えているというのがありそうです。
もうひとつ重要なことは、「見えている情報」が音声化されることで視聴者にとっては「わざわざ意識を割いて見なくてもいい情報」として整理され、
それによって視聴者が「より見たい情報」に集中できるということです。
ぷよぷよでも、中盤の撃ち合いで「これは返る量の対応ができている!」と聞いたら次にそれを受ける側のアクションに意識を集中することができるでしょう。

その後、状況が落ち着いたタイミングで「見えていない情報」を付加的に付け加えましょう。
先程の動画でも、試合の決着がついてから試合の展開や選手の行動を振り返るように情報を付け加えていたと思います。
「見えていない情報」を自分なりの解釈で伝えることには、その試合や行動に深みをもたせることになりますし、
様々な解釈が考えられる中にひとつ目印をつけることにもなるので、
本来ばらばらの捉え方になるはずだった視聴者の解釈をギュッと近くにまとめて一体感を生んでくれます
そもそも実行するには座学や技術力の必要なことですが、ぜひトライしてみましょう。
 
「見えていない情報」の解釈は完全に正しくできることは少ないとは思いますが、
間違ってもプレイヤーに対してリスペクトを欠いた発言にならないように注意しましょう。
まとめ
  • 「見えている情報」はあまり気にせず口に出してしまってよし。臨場感も増えるし視聴者が見たいものに集中できる。
  • 落ち着いたら「見えていない情報」も付加してみよう。試合や行動に対する解釈を揃えて視聴者の一体感が高まる。
盛り上げるための方法を考えよう
ここまでも一体感・臨場感など一部の盛り上げ要素については都度言及してきましたが、
最後に実況解説で試合全体を盛り上げるための工夫について少し考えてみましょう。

まず自明に「話し方」の工夫があります。
想像に難くないと思いますが、ずっと平坦なテンションで淡々と喋っていては視聴者の感情も動きません。
1ゲームの中でもはじめは基本冷静に、大きな動きや決着ではしっかりと声のトーンを上げて抑揚をつける、
そして試合全体を通したときにも最終の決着に向けてテンションが高くなっていくようにコントロールしていくことを意識しましょう。

テンションを上げていく中で、スーパープレイを見て絶句したり、笑いたくなったり、ただ叫んでみたりしたくなることがあると思います。
実況解説者としてそんなことをしていいのか……?と一瞬冷静になってしまう気持ちもあると思いますが、いいんです。
自分がそう感じたなら視聴者も同じような感情になっているはずです。
そんなときは素直に感情を表現して、視聴者と感情を共有しましょう。それでこそ一体感が生まれます。

また、プレイヤーのストーリーやキャラクターをおさえておくことも重要です。
これに関しては次の動画、23:00~23:40の大和周平さんの実況を観てみましょう。


先程言及した素直な感情の叫びもありつつ、
葛葉選手とローレン選手がライバルであるというストーリー性、
柊ツルギ選手が「勇者になりたい」と思っているというキャラクター性をおさえた見事な実況だと思います。
これによって、その試合の中だけでなく外部からもエモーショナルな要素が加わってくれます

ぷよぷよの実況解説ではとくにsymさんが意識しておられる印象で、
おいうリーグの「プレイヤーに注目してもらいたい」という理念を体現した印象的な実況をいくつも生み出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=mUk1L_03APc より、symさんによる個人的に忘れられない素敵な言い回し
下調べが必要な分ちゃんと労力がいりますが、その分うまく使えればとても効果的です。
ぷよぷよプレイヤーwiki など、有志が各プレイヤーの歴史をまとめてくれているものもありますので、
それらを活用しつつ準備してみましょう。
まとめ
  • 盛り上がりどころに向けてテンションをコントロールしよう。
  • 感情は素直に出してもよい。視聴者との一体感が高まる。
  • プレイヤーのストーリーやキャラクター性に注目してみよう。
おわりに
というわけで、ここまで自分なりに実況解説について考えてきたことをまとめてみました。
当たり前に感じることも多いと思いますがやってみると意外と難しい、
というか自分はまだ全然できてません。偉そうに語ってすみませんという気持ちでいっぱいです。

改めてここに書いたことを自分でも見直して、視聴者の皆さんと一緒に盛り上がれるような実況解説ができるようになっていきたいです。
来年はオフライン大会などでも機会があれば実況解説にチャレンジしてみたいです。またきっと違う難しさがありそうですし、違う楽しさもありそうです。
自身のぷよぷよもしっかり鍛えていかないとそのチャンスもなかなかないよなあ……とも思うのでプレイヤーとしても引き続き練習頑張ります。

最後に、コメント等で実況解説にも言及いただいている皆様本当にありがとうございます。
あくまで選手が主役なのでそういったコメントがなくても何も気にはならないのですが、
わざわざ言及していただいているのを見るととても嬉しく活力になってます!実況解説者はみんなめちゃくちゃ嬉しいと思います。
皆様がひきつづき楽しく対戦動画を観られるよう尽力していきますので、
今後ともよろしくお願いします!
作成日時:2025/12/16 20:02
コメント( 0 )
コメントするにはログインが必要です
シェア