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「「受け」を科学する」という題でぷよ学会発表をしました

by
wata
wata
2023冬ぷよ学会が 2023 年 2 月 12 日に開催されました。
あやさ🌸さん、企画運営ありがとうございます!)

そこで、タイトルに書いているように「「受け」を科学する」という題で発表させて頂きました。
以下の動画は学会での発表に追加説明をしたものです。もし興味があれば見て頂けたら幸いです。
※ここでいう「受け」はお邪魔ぷよの受けではなく、ぷよを設置するときの「受け」です。主に会話では、広い、狭いなどで語られます。
※本投稿は以下の動画のまとめ記事となっています。



また、上級者が「こうおいた方が受けが広い」と言っていても、「どうしてなんだろう?」となることがあります。なので議論や会話では使われていますが、具体的に「受け」とはどういうことなんだろうということを掘り下げてみました。

研究の背景

研究の目的
  • 「受け」を構成する要素を定義し、広狭を表現できるようにしたい
  • 今後の研究のために、最善手を決定する要素として扱いたい
用語
内容に入る前に、今回の発表で使われている用語を載せておきます。


受けの基本

ぷよは基本 2 つずつ設置する必要があるので、一旦最小単位として、2 マスの受けを考えてみます。
2 マスでそれぞれ違う色を設置したい場合は、バラの受け、同じ色を設置したい場合はゾロの受けができます。組ぷよは 16 種類なので、バラの受けを作れば 12/16 で 75% の組みぷよが受けられます。逆にゾロの受けを作っても 4/16 で 25% の組ぷよしか受けられません。配ぷよは均一ではないにしろ、それなりにならされているのでこの違いは意識しておく必要があると思います。

次に 2x2 の 4 マスでも考えてみます。2 色で設置する前提で考えると、同色が縦に並ぶパターン、横に重なるパターン、そして市松模様なるパターンがあります。
(個数を 1、3 とかにすればもっとパターンはありますが今回はこの 3 つを考えてみます)
 

一見、同じような形なので、受けの広さに差はなさそうですが、実際に検証してみると違いが出てきます。
組ぷよの受けとしては 16 種受けられていても、設置できるパターンに差があったりします。また、市松模様の場合はゾロの受けはありませんが、設置のパターンで言えば一番多かったりします。この 4 マスだけで考えると、その差が一旦なんなのかというのが分かりづらいですが、2 手目、3 手目とかを考えていくと違いが出てくると思っています。

今までは 1 手目だけを考えてみましたが、2 手目に関してどうなるのか一つ例を見ていきます。
この例では 1 番のぷよに赤ゾロを設置しています。そうすると、組みぷよの受けとしてはバラのウケはなくなり、ゾロのみになります。さらに色としては赤が設置できないので、3 色となっています。このように、「受け」には形受けと、色受けの 2 つがあると考えています。

色受け

まず色受けについて考えてみます。
色受けは先ほどの例のように隣接するぷよによって制約を受け、受けが狭くなります。

この例だと、2 番のぷよには青しか設置することができません。このように段差が多い盤面では先に設置されているぷよによって色制約をより強く受けます。逆に平な盤面では、色制約が少なく組みやすいと感じるでしょう。

動的隣接、静的隣接について

隣接には安定状態の静的隣接と、連鎖中の動的隣接があります。
静的隣接で消えてしまう場合は、設置したタイミングで消えますが、動的隣接によって想定外にぷよが消える場合を暴発と呼びます。

ぷよぷよは連鎖を構築することを前提にすると、最初と最後の連鎖を除き、前の連鎖と次の連鎖と静的に隣接していることが多いので、各連鎖の隣接数はだいたい 2 以上になります。鶴亀は前後の連鎖との静的隣接は防ぐことはできますが、安定状態の静的隣接は無くせません。おじゃまぷよがあれば完全に隣接を無くすことができ、色制約が完全に解除されるため、同色連鎖を作ることもできます。

実際の連鎖の隣接数
ここで実際の連鎖について、隣接数が どうなるのかを検証してみます。
検証する連鎖は先折 GTR で、フィールドの高さを左から、 333666 マスの合計 27 マスを利用し、6 連鎖、または 7 連鎖の全パターンである、 122,380 パターンで検証しました。

結果、全体の平均隣接数は約 2.75 となりました。最大隣接数は 5 で、連鎖としての最大隣接数平均は 3.43 でした。
平均隣接数 3.43 の連鎖の例は以下の通りです。

また、傾向として、平均隣接数は連鎖数が大きくなれば、増大する傾向にあります。4 連鎖では 1.69 だったのが 7 連鎖では 3.13 になっています。これは 1 連鎖目の影響が連鎖数が少ない場合には、 より大きく出るというのもありますが構築する連鎖数が多いということは、ぷよの数が多くなるのと、 動的隣接も発生しやすくなる影響の方が強いと考えています。
このことが初学者には大連鎖を 組むのが難しい理由の一つだと思います。
連鎖の最初と最後以外の隣接数が完全に 2 の連鎖は 初学者には取っ付きやすいのかもしれません。
階段やカギ積みは定型の形としては完全静的隣接(最初と最後の連鎖の隣接が 1 でその他の隣接数が 2)なのでいいと言えそうです。

形受け

まず、先折 GTR のように連鎖セットに固定部分がある場合は、 固定部分にぷよを設置しても連鎖の候補数については影響はありません。
 

ただ、形が固定なので、ぷよを設置する時の 制約は強くなっています。そのため、固定部分に設置できる組みぷよを 優先的に設置するのは、非常に理にかなっていると言えます。連鎖セットの上部は下部を置いた後になるため、 形的な制約、隣接色制約が発生するので制限がかかるのはある程度仕方がないことだと思います。

なので土台の組み方としては固定部分で使えない組みぷよを パターンが多く柔軟な連鎖尾部分に設置していき固定部分が完成後、連鎖尾部分に制約が大きくなってくるので 固定部分の上部に生まれる、柔軟な多重部分を活用していくというのがいいと思われます。
 


この感覚が身につくまでは、初学者が 土台を組むのは難しいと感じるでしょう。つまり、連鎖構築で制約が強くなっていく部分が増えた場合に 柔軟に受けられる部分を作っておく必要があるわけです。これは土台を組みたいだけなのに、連鎖尾部分のパターンと 多重部分も覚えなければ上級者のようには組めないということです。

実連鎖における形受け
 

GTR の固定部分以外にぷよを置く場合、 候補数を一気に減らしてしまう設置方法があります。
それぞれのパターンを説明します。
まず、支え部分と同色のゾロが来た場合です。
 

これは 5、6 列目に寝かせると最も候補数を減らすことになります。この場合最も候補数を残すには、3、4 列目にちぎって設置することです。
これはだぁ積みと座布団の両パターンを残せるためです。もしちぎりを嫌うのであれば、4 縦に設置し、だぁ積みの形で受けるのが最も候補数が多いです。

設置すべきマスが多い状態で、候補数が減ってしまうと形受けの制約が強くなるので初手周りで、候補数を一気に減らしてしまう設置仕方は避けるべきでしょう。
 

このように、形受けの「受け」の広さを語る場合は候補数の多寡で定義できそうです。
ここまで、色受け、形受けについて説明して来ましたが、どちらかを優先するだけでは、受けを広く保つことは出来ません。
そして、実際の盤面では確定している要素もありそこを考慮すると常に色、形ともに最善の受けを選択しなくてもいい場合があります。つまりは現在操作中の組ぷよとネクストは確定している情報なので、その 2 手が受けられなくてはそもそも成り立ちません。逆に一見窮屈になる 1 手でもネクストを含めた確定している 2 手目を置くことで、その後の形の受けが広い場合は問題ないとも言えます。

また、ぷよぷよは均一で無いにしろ、ある程度各色の個数は均されています。連鎖の形にぷよを置くということは、形を決定しているのと同時に使用する色の個数も決定しています。土台に 2 色しか使えないように置いてしまっては、他の色が来た時に「受け」ることができません。各色の必要数を考慮した上で、形を選択、また複数の場所で、必要とする色も被らないようにした方がいいとも言えます。

土台構築時は、GTR 部分と、連鎖尾部分で必要な色、ある程度構築した後は、多重部分と連鎖尾部分で必要な色。この辺を意識することが実際の配ぷよに対して、「受け」を広くすることになります。これは完成系だけからでは見えない、連鎖構築途中の連鎖構築順番やトータルとしての受けのバランスです。

受け以外にも考慮すること

次は「受け」以外にも考慮することについて説明します。
今回の範囲外ではありますが、対戦に勝つためには状況により「受け」よりも優先させることがあります。
それは、ちぎり、全消し、隙、形の良さ、段差です。

まとめ
  • 「受け」には色受けと形受けがある
  • 色受けはゾロとバラを意識して考える
  • 色受けは隣接制約によって制限を受ける
  • 隣接制約には静的と動的がある
  • 連鎖数が多くなれば、連鎖の平均隣接数は増える傾向にある
  • 形受けは固定部分を含むのであれば、固定部分を優先的に設置した方がいい
  • 形受けで柔軟性を増やすには連鎖セットの下部部分の組み合わせを増やした方がいい
  • 自分の連鎖セットで候補数を減らす置き方、減らさない置き方を把握した方がいい
  • ぷよを設置するということは、形の決定だけでなく、その連鎖に必要な色の個数を決めている
  • 連鎖構築時に複数の部分で必要となる色をバランスよく保つことが実際の配ぷよに対する「受け」を広くできる
  • 色受け、形受けだけでなく、確定要素も考慮する必要がある
  • 「受け」以外にもちぎり、全消し、隙、形の良さ、段差という考慮すべきこともある

以下の 3 つを意識すれば、人による受けの感覚のずれをある程度は解消できるのではと考えています。
  1. 「受け」の広さを説明する場合は、想定している連鎖セットを明確にすること。
  2. どこでどのタイミングの「受け」の柔軟性を受け持つ想定の形かを明確にする。
  3. 受け以外の要素も考慮した選択を提示しているのであればその要素についても明確にすること。
さいごに

この投稿の盤面作成と動画での盤面作成にはこなもの様が公開してくださっている画像素材を使わせて頂いています。
ありがとうございます!
ぷよぷよの盤面を作成するための画像素材を公開しました。by こなもの
作成日時:2023/02/22 20:39
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