1250

初中級者は初手4連鎖全消しを取った方が良い?

by
アイソスタシー
アイソスタシー
 上級者の間では初手4連鎖全消し」は基本取らない方が良いとされています。その理由は、こちらが4連鎖をしている間に相手から高確率で5~6連鎖を返されてしまい不利になるからです。この事は大会の実況などでも良く触れられる話題なので、多くのぷよらーが認識している常識・通説となっています。
 しかし、この通説は、「相手の4連鎖全消しに高確率で5~6連鎖を返せる実力がある」から成り立つ話です。

 では、
初級者・中級者の場合は初手4連鎖全消しを取った方が有利なのか不利なのか」、どっちなのだろう?

 
 本記事は、そんな疑問から出発し、以下のようにレート戦でデータを取って解析・仮説検定を行い、統計学的に検証しました。
 
 結果だけ先に述べますと、
初・中級者は初手4連鎖全消しを取った方が圧倒的に有利である、という結論が得られました。


データ

 PS4,Switchのぷよスポのレート戦で、自分が初手4連鎖全消しを取った試合の勝敗と対戦相手とのレート差のデータを30試合記録しました。データ取得期間の自分の平均レートはPS4で2400弱、Switchで2700弱です。
 一つ重要な点として、プレイヤーである僕はあくまで自分の普段の土台で戦って、手なりで取れる4連鎖全消しのみを取りました。つまり、4連鎖全消しを取りやすくなるように無理に土台を変形させたりはしていません。そして、土台構築の手なりで取るため、基本的には4個消し、最短8手での4連鎖全消しが多いです。

 その結果、自分が初手4連鎖全消しを取った試合の30試合の勝率は23勝7敗で、勝率76.67%でした。この時点で4連鎖全消しを取った方が圧倒的に有利なように見てとれますが、ここではそれが統計学的に有意かどうか、仮説検定を用いて定量的に検証していきます。


仮説検定

 ここで次の帰無仮説「初手4連鎖全消しを取った事がレート戦の勝率上昇に寄与していない」を検定します。有意水準は厳しめに1%と設定します。(この帰無仮説が棄却されるという事は、このデータがたまたま1/100で起こる不運な確率で偏った結果を出してしまった可能性を排除する事を意味します。)

 仮説検定を行うために必要になるのは、各対戦相手との理論的な勝率で、これは対戦相手とのレート差から推定する事が出来ます。(ぷよスポが採用しているのがイロレーティングによるため。参照記事「https://puyo-camp.jp/posts/85999」。イロレーティングのWikipedia「https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%AD%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0」)。
 その理論的な勝率を用いて30試合の勝率をコンピュータ上で10000回シミュレーションし、“たまたま”76.67%を超える勝率が出る確率を求めました。



結果

 その結果、データと同じ対戦相手達との30試合の勝率が”たまたま”76.67%を超える確率(p値)は0.03%、10000回中僅か3回という結果が出ました。0.03%<<有意水準1%であるため、帰無仮説「初手4連鎖全消しを取った事が勝率上昇に寄与していない」は文句なしに棄却されました。

 よって、


 「初手4連鎖全消しを取った事は、レート戦の勝率上昇に寄与していた」

と統計学的に有意に結論づけられました。

 ちなみに、レート差から推定したこの30試合の理論的な勝率は49.19%でした。僕のレート帯が格上と当たる確率と格下と当たる確率がほぼ同じためです。つまり、本来5割程度の勝率の所を、初手4連鎖全消しを取る事で約77%まで上げる事が出来たのです。本来15勝15敗の所を、初手4連鎖全消しを取る事で23勝7敗と、30試合中8勝も勝ち星を増やす事が出来たのです。

 
つまり、
「初・中級者は初手4連鎖全消しを取った方がかなり有利である」、と結論づけられます。


対戦相手のレート帯毎の検証

 次に、対戦相手のレート帯毎の考察を行っていきます。対戦相手とのレート差を以下の3つの区分に分けて勝率を見てみます。

自分よりレート100以上の格上:7勝5敗 (勝率58.3%) > 理論勝率=32.0%

自分と同レート帯(レート差±100):6勝2敗 (勝率75.0%) > 理論勝率=49.6%

自分よりレート100以下の格下:10勝0敗(勝率100%) > 理論勝率=69.5%

 格上・同レート帯・格下、いずれのグループに対しても4連鎖全消しを取る事で勝率が25~30%程度上昇している事が分かります。つまり、格下だけに刺さっているわけではなく、格上にも4連鎖全消しは刺さっているのです。
 仮説検定を行うと、p値は、格上:4.7%、同レート帯:14.6%、格下2.8%でした。流石に3つに分けるとデータ数が少なくなってしまい1%有意水準では何も言えませんが、それでもよく用いられる5%有意水準では格上・格下グループ共に、4連鎖全消しを取った方が統計学的に有意に良いという結果になりました。
 同レート帯は単なるデータ不足で、レート差を±150に広げれば10勝2敗(勝率83.3%)でp値0.5%と、十分有意な結果となりましたが、やや統計学的にご都合的なやり方なので強くは主張できません。もう少しデータを取る必要があります。


考察

考察1: 初手4連鎖全消しが強い理由

 ここからは、上のデータ分析と自分が実際に対戦した時の状況も加えて、初手4連鎖全消しの強さの理由を考察していきます。
まず上のデータで目を見張るのは、自分よりレート100以下の格下には10勝0敗と、初手4連鎖全消しが完全に刺さっている事です。これらの相手に対しても、普通に戦ったら理論的な勝率は69.5%と約3割は負けてしまいます。それを取りこぼさないので、初手4連鎖全消しは相当に強力である事が分かります。
 この理由は以下の通りと考察できます。自分よりレート100以下は、Switchレート2600以下であり、そのレート帯はぷよを積む速度がやや遅い事が多く、こちらの4連鎖全消しに対して5連鎖以上を安定して返す事が非常に難しいのです。実際、ほとんどの試合で4連鎖のお邪魔がそのまま刺さって勝つ展開になりました。4連鎖全消しに対して安定して5連鎖以上を返すには、ほぼ下押しっぱかつ柔軟なツモ捌きが求められる高難度の芸当なのです。全消し=クイックである事も、相手に求められる速度に拍車をかけているでしょう。
 僕も実際に相手からいきなり初手4連鎖全消しを打たれた時、5連鎖以上を返す事はほぼ出来ません。4連鎖も中々打てず、全消しなど関係なく4連鎖の潰しが刺さって負け確になる試合が多いのです。実は僕の対初手4連鎖全消しのデータも取っており、僕は1勝12敗と惨敗です。(僕を見かけたら4連鎖全消しを取るとかなりの確率で刺さりますし、さらに言えばいきなり不意に4連鎖をぶっ放しても勝てるかもしれません;;)

 次に、同レート帯や格上に対しても4連鎖全消しが刺さっているというデータについて考えてみます。格上になればなるほど、積み速度も速く、5~6連鎖を返す事が出来る確率が増えていきます。それでもレート3200以上のプロ・上級者ほど安定して返す事は出来ず、4連鎖全消しが刺さる事が多いです。
 今は先折りGTRが凄く流行っており、一見折り返しから組むのでそうした速い攻撃に強いように思えますが、実は
「どのツモでも先折りGTRを組む」という戦い方は、「好都合なツモが来ない時には色がばらけて連鎖の完成が遅くなる」というデメリットをはらんでいるのです。そのため、初手4連鎖全消しに対して安定して5連鎖を返すという事は、「ツモの偏りに対して柔軟に最適な形を最速で組める」というかなりの上級者でないと安定しては出来ない芸当と言えます。
 ちなみに、今回の30試合で最もレートが高かった相手はSwitchレート3026の方で、自分より315も格上の方でしたが、初手4連鎖全消しにより勝つことが出来ました。



考察2: 初手4連鎖全消しはどのくらいのレートに行くまで取るべきか

 今回の検証では「ぷよスポSwitchの平均レートが2700以下(PS4だと2400以下)の初中級者は、初手4連鎖全消しが見えたら取った方が、確実にレート戦勝率が上がる」
という結論が出せました。つまり本検証からは、Switchぷよスポ平均レート2700弱(PS4平均レート2400弱)を中心としたレート帯でしか結論が出せませんでした。

 ではそれ以上の実力者は、どのくらいの人から初手4連鎖全消しは取らない方が良くなる(勝率がかえって下がる)のでしょうか?
 これは聴き込みに頼った情報になりますが、Switchレート3000くらいで初手4連鎖全消しを取った時の勝率が体感5分5分になるそうです。つまり、Switchレート2900台までは初手4連鎖全消しを取った方が勝率が上がるかもしれません。
要検証案件です。



考察3: 初手4連鎖全消しを取る勝率以外のメリット

 4連鎖全消しを取る事は、「レート戦勝率上昇」以外にも、「実力向上の面」、「モチベの面」でもメリットがあると感じています。例えば、4連鎖全消しが見えるようになる事で、自陣や連鎖の繋がりの把握能力の向上が期待されます。決まった形を常に組むのではなく、全消しが見えたら柔軟に置き方を変えられる能力は、ぷよぷよの応用的な能力の向上に繋がり、上達へ繋がると考えられます。さらに、4連鎖全消しに対して4~5連鎖で返されるなど、その後乱戦の展開になる事があり、普段とは違う戦いの経験値が増える事で、乱戦力を身に付ける事が出来ます。
 また、一方的に初手4連鎖全消しを取って勝つ事は、優越感にも繋がり気持ち良いです。レート戦で沼った時の切り替えになったりと、ぷよモチベにも良い影響を与えると自分は感じています。


考察4: 初手4連鎖全消しが有利と言う結果に対する一つの注意点

 今回の結果で一つ注意点があります。それは、初中級者は初手4連鎖全消しが強いからと言って、4連鎖全消しをとにかく狙う置き方をしたら強いとは限らないという事です。4連鎖全消しは確かに強いですが、滅多に出現しません。初手4連鎖全消し30試合のデータを取るまでにレート戦約4000セット(試合数にすると10000試合くらい?)かかりました。4連鎖全消しを狙うのに特化すれば取れる試合は何倍かには増えると思いますが、それでも取れない試合の方が圧倒的に多いと思われます。その稀な4連鎖全消しを狙いすぎたがために普段の土台が悪くなったりすると、結果的に勝率が下がってしまいます。あくまで手なりで全消しを取った上での結果であることに注意が必要です。
 また、今回は手なりで取った基本最短8手での4個消し4連鎖全消しが多かったですが、これを4連鎖全消しを狙うために10手や12手と手数を増やすと、今度は相手の5連鎖以上が間に合う確率が高まるので初中級者と言えども有利とはならなくなるかもしれません。
 
そのため自分の形を崩してまで4連鎖全消しを狙うのが強いかどうかまでは、この結果だけでは言えないことになります。もし積極的に狙いたいとしたら全消しが取れなかった時の立ち振る舞いも含めての戦術として考えていく必要があるでしょう。


考察5: 上級者の間では常識とされている理論・通説が、初~中級者にも当てはまるとは限らない?

 今回の初手4連鎖全消しは、上級者の間では「取るべからず」が基本的には常識ですが、なんと初~中級者では真逆の「取るべきである」という強い結論が得られました。
 これと同様に、上級者の間では常識とされている理論・通説が初~中級者には当てはまらないという事例は他にもありそうに思えます。例えば、くまちょむさんが用いる序盤単発戦法は、土台の柔軟性が未熟なレート帯ではより刺さりそうな気がします。先撃ち・後撃ちの有利不利の度合いも、上級者と初中級者では変わってくるかもしれません。超上級者の間では単発が最強とも言われていますが、初中級者ではやはりニダブ即打ちが純粋に強そうです。

 ぷよぷよは参考とするプレイヤー、大会の実況・解説者が基本上級者であることから、上級者の間で成り立つ理論が常識・通説になりがちです。しかしその常識・通説は時に、初中級者、さらには初心者には大きく異なるケースがあることが今回一例として示されました。この違いを意識する事は、初中級者や初心者の上達アドバイスを行う際にも役に立つかもしれません。また、初中級者のプレイヤーも、一度通説を疑って新たな戦術に挑んでみるのも面白いかもしれません。


結論

・初~中級者(Switchレート2700前後)のプレイヤーは、初手4連鎖全消しを取った方がレート戦勝率が上昇します。(統計学的にも有意な結果です。)

・その原因は主に、意表を突く初手4連鎖全消しに対して初~中級者は安定して4~5連鎖を返す事が非常に難しいからです。なぜなら、下押しっぱに近い速度・及びツモ捌きの柔軟さが求められるからです。


提言

・ぷよぷよの常識とされている話・理論の内の一部は、実は上級者の間でしか成り立たず、初中級者では全く別の結果が最適になるという事は、4連鎖全消しの他にもまだまだあると思われます。そうした新しい視点で新戦術や新指導法を試してみると面白いかもしれません!


以上、記事を読んで下さりありがとうございますm(_ _)m
ご意見・ご指摘・感想など気軽にコメントしてください!


 
更新日時:2023/04/24 18:18
(作成日時:2023/04/24 16:50)
コメント( 4 )
4件のコメントを全て表示する
アイソスタシー
アイソスタシー
2023年4月26日 10時23分

なるほどです!
初手3連鎖や4連鎖も初中級者相手には結構有効だと感じました
即本戦発火もそうですね!
やはりすぐに本線につなげる速度・技術が高くないと安定して返せないんですよね
コメントありがとうございます!

アヒャッ!(゜∀゜)
いーある
いーある
2023年4月28日 12時11分

手順でシンクロしててお互いに4連全消し取れる場合はどうなりますか?

アイソスタシー
アイソスタシー
アイソスタシー
2023年5月7日 20時48分

コメント気づくの遅れてごめんなさい(> <)
30回データを取ったうち、1度だけシンクロして互いが4連鎖全消しを取った回がありました。
なのでかなり稀なケースだと思います。
互いに4連鎖全消しが完成しているという事は、それを5連鎖6連鎖に伸ばす事が普通より容易と考えられるので、4連鎖全消しを取る事の有利度が下がる気がします。

いーある
アヒャッ!(゜∀゜)
コメントするにはログインが必要です
シェア